「親知らずの抜歯と神経麻痺について」

親知らずの抜歯のリスクには下唇や舌の感覚、味覚の麻痺があります。
それぞれ下唇の感覚は下歯槽神経、舌の感覚・味覚は舌神経という神経が司っています。
それらの神経は親知らずの近くを走行しており、不運にも抜歯の際に傷つけてしまうことがあります。
特に下歯槽神経は下顎骨の中を走行しており、しばしば[画像①](CT画像)のように親知らずの歯根と癒着していることがあります。この様な場合、抜歯することで、抜歯中に歯根で神経を傷つけてしまい、抜歯後に下唇の感覚麻痺が出てしまうのです。
神経損傷は軽度なものは数ヶ月で回復し、感覚は元に戻ります。
しかしそれよりひどい損傷の場合は痺れや神経痛などの後遺症になることがあるため、親知らず抜歯による神経損傷は絶対的に避けるべき偶発症であると思っています。
 最近では下歯槽神経麻痺を予防するための親知らずの処置方法が2つ発表されています。
1つは『二回法抜歯』といい一回目は歯冠を除去し、約3ヶ月後に残っている歯根を抜去する抜歯の時期を二回に分ける方法です。
2つ目『コロネクトミー』といい歯冠だけを切除し歯根は骨の中に埋めてしまう方法です。
先ほどの[画像①]の患者さんは2回法を予定したケースです。そして[画像②]は[画像①]の歯冠を除去し3ヶ月後のCT画像です。[画像②]は神経から歯根が離れていることが分かります。
歯冠を切除した歯根は約3ヶ月で数ミリ程度前方に移動します。その結果、下歯槽神経から離れるため、神経損傷のリスクなく抜歯することができるようになるのです。
ムラヤマ歯科では下歯槽神経障害のある親知らずの抜歯関しては二回法やコロネクトミーでの抜歯を勧めています。
親知らずの抜歯で悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ご相談ください。

副院長 村山雅人